アンビエント・ファインダビリティ

有益な情報が存在していたとしても、見つけることができなければ何の意味もない。その「見つけやすさ」を表す考え方が「ファインダビリティ」。また、「アンビエント」はいつでも・どこでも・誰でも(なんでも)ネットワークに接続可能な世界を表している。この本では、ファインダビリティに関する技術の歴史、情報に関する先人の研究、ネット上の新しい動き(ロングテール、フォークソノミなど)について解説されている。

アンビエント・ファインダビリティ ―ウェブ、検索、そしてコミュニケーションをめぐる旅

アンビエント・ファインダビリティ ―ウェブ、検索、そしてコミュニケーションをめぐる旅

情報とその検索に関する技術や研究成果のカタログとして使える。基本的には人間と情報の関わりについての話なので、ウェブに限定せず広く応用が可能。普段感じていることをもっともらしく説明するときに使えそうな情報(研究成果や言い回し)が多いので、なにかと重宝しそう。使えそうな表現をメモメモ。。。

  • ファインダビリティ
  • ノウアスフィアにおける経路探索
  • 情報伝達における冗長性の大切さ
  • ムーアズの法則
  • 最小労力の原理
  • ユーザエクスペリエンスのハニカム構造
  • Stanford Guidelines for Web Credibility
  • ファインダビリティはユーザビリティに先行する
  • 情報過多


アンビエント・ファインダビリティからのメモ

ファインダビリティ

find・a・bil・i・ty n

  • 位置特定可能な、あるいは進路決定可能な性質
  • 特定の対象物の発見しやすさ、あるいは位置の識別しやすさの度合い
  • システムまたは環境が対応している進路決定と検索のしやすさの度合い

ノウアスフィアにおける経路探索

ジョージ・レイコフによる「ノウアスフィアは単なるメタファではない」という主張

言語活動のみならず、思考や行動にいたるまで、日常の営みのあらゆるところにメタファは浸透しているのである。(中略)われわれの思考を支配しているさまざまな概念は、知性の活動だけに影響を与えているのではない。(中略)したがって、日常の諸々の現実は、主として概念体系によって明確に規定されているわけである。(中略)ものの考え方や、日常の営みというのはまさにメタファーの問題であるということになろう。

アンビエント・ファインダビリティ ―ウェブ、検索、そしてコミュニケーションをめぐる旅(p.41)

情報伝達における冗長性の大切さ

Paul ArthurとRomedi Passiniは「同じ情報を伝えるのに複数の手段を用いることがもっとも安心な方法」であると主張している。

われわれは常に、情報を順序だてて提示する。訪問者が建物に入ると、目的のゾーンについての情報がまず目に入るようにする。
標識や地図には、少数の項目だけ(一般には3つ)を記述すると、一目で読み取ることができる。
地下鉄の路線図画わかりやすいのは、写実性を排する代わりにシンプルさを重視する手法によるものである。
最後に、経路探索のための情報伝達における冗長性の大切さを今一度指摘しておこう。同じ情報を伝えるのに複数の手段を用いることが、伝達を確実にする最も安心な方法だ。

アンビエント・ファインダビリティ ―ウェブ、検索、そしてコミュニケーションをめぐる旅(p.38)

原著はPaul ArthurとRomedi Passini「Wayfinding:People, Signs, and Architecture」

ムーアズの法則

ユーザにとって情報を持たないことより持つことのほうが苦痛で面倒であるときには必ず、情報検索システムが利用されにくくなる傾向が見られるであろう

カルヴィン・ムーアズ自身による「ムーアズの法則」についての説明

情報を手に入れることは苦痛であり面倒なのだ。誰でも身に覚えがあるだろう。情報を入手すればまずそれを読まなければならないが、それは常に簡単とは限らない。次にはそれを理解しようとしなければならない。そして情報を理解すれば、そこまでの作業が間違っていたり、または無駄だったことが判明するかもしれない。結果的に、情報を入手して利用するよりもそのどちらもしない方が、苦痛も面倒も少ないことが多いのだ。

アンビエント・ファインダビリティ ―ウェブ、検索、そしてコミュニケーションをめぐる旅(p.57)

最小労力の原理

ジョージ・キングズリー・ジップによる「最小労力の原理」

各個人は、自身の最も少ない平均仕事量(定義上「最小労力」と呼ぶ)を費やせばよい一連の動作を採用する傾向にある。

アンビエント・ファインダビリティ ―ウェブ、検索、そしてコミュニケーションをめぐる旅(p.70)

この原理は、ユーザは「自分の仕事を面倒にするような情報には目を向けない」というムーアズの法則ともつじつまが合う。また、ユーザがユーザビリティの高い情報システムへと容赦なく移行していくことを説明する材料にもなる。「デスクトップにGoogleがあるというのに、図書館に行く理由はない」

結局、集団の英知と群集の無知とは紙一重なのだ。(中略)「限定的合理性」という条件の下では、人間は「最小限の成果で満足する」のがせいぜいだ。

アンビエント・ファインダビリティ ―ウェブ、検索、そしてコミュニケーションをめぐる旅(p.70)

ユーザエクスペリエンスのハニカム構造

  • 役立つこと(Useful)
  • 使いやすいこと(Usable)
  • 望ましいこと(Desirable)
  • 探しやすいこと(Findable)
  • アクセスしやすいこと(Accessible)
  • 信頼に値すること(Credible)
  • 価値を生み出せること(Valuable)

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Stanford Guidelines for Web Credibility(スタンフォード大学によるウェブ信頼性ガイドライン

ウェブサイトの信頼性を評価し、強化するための資料として、Stanford Guidelines for Web Credibility(スタンフォード大学によるウェブ信頼性ガイドライン)が参考になる。

ユーザビリティの伝道師的存在であるドン・ノーマンは著書「エモーショナル・デザイン」の中で「ユーザビリティとデザイン美学が相関するとは予想されていなかった」という調査で導き出された驚くべき結果を取り上げ、魅力的なものほど役に立つことを示す確かな証拠を挙げている。(中略)

同様に、スタンフォード大学の説得技術研究所における研究は「信頼に値すること」と「望ましいこと」の間に強力なつながりがあることを明らかにした。ユーザはデザインが優れているサイトを信頼する。また、ユーザは、検索結果の上位に表示されるサイトを信頼する。

アンビエント・ファインダビリティ ―ウェブ、検索、そしてコミュニケーションをめぐる旅(p.144)

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1 サイトの情報の正確さを分かりやすく立証せよ
2 サイトの裏側に実世界の組織の存在を示せ
3 組織と提供するコンテンツやサービスの専門性を強調せよ
4 誠実で信頼できる人間が裏側にいることを示せ
5 あなたにコンタクトできるようにせよ
6 プロライクなデザインにせよ
7 使いやすく便利なサイトにせよ
8 サイトをよく更新せよ
9 宣伝要素には節度を持て
10 あらゆる意味で小さなエラーも起きないようにせよ

関連URL

ファインダビリティはユーザビリティに先行する

いにしえの格言として伝わる以下の真理には、誰もが同意せざるを得ないだろう。

ファインダビリティはユーザビリティに先行する
アルファベット順でも、ウェブ上でも
そして見つけられないものは使うことができない

アンビエント・ファインダビリティ ―ウェブ、検索、そしてコミュニケーションをめぐる旅(p.146)

情報過多

情報は時には少ないほうが望ましいことは研究により立証されている。情報量と意思決定の制度の間には逆U字型の相関関係が存在する。

ロンドンのKingsCollegeにおける最近の研究では、情報過多はマリファナよりも集中の妨げになることが示されている。(中略)
人間は、選ばないことを選ぶ。普段の習慣を頼りにする。よく知っているブランドを信用する。同僚の真似をする。しかし、教育や娯楽、あるいは保険や投資など、決めなくてはならない物事はますます勢いを増して増え続ける。(中略)ついにはそのせいで気がめいってしまう。

アンビエント・ファインダビリティ ―ウェブ、検索、そしてコミュニケーションをめぐる旅(p.216)

私たちは文化として、自由や自主判断や多様性といった価値をどこまでも信奉しているので、オプションがあるなら、どのひとつもあきらめまいとする。だがあるだけの選択肢を握りしめて手放すまいとすれば、それは間違った判断につながり、心痛につながり、ストレスにつながり、不満につながる。場合によっては臨床的うつにつながる。

なぜ選ぶたびに後悔するのか―「選択の自由」の落とし穴

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''Info-overload harms concentration more than marijuana''

THE next time your boss complains you are not focused enough, blame it on email and phone calls. Even smoking dope has less effect on your ability to concentrate on the task in hand.

At least that's what Glenn Wilson, a psychiatrist King's College London, found when he and his team asked 80 volunteers to carry out problem-solving tasks, first in a quiet environment and then while being bombarded with emails and phone calls.

Despite being told to ignore the interruptions, the average IQ of the volunteers dropped by about 10 points. Not everyone was equally affected - men were twice as distracted as women. Studies have also shown that IQs of people high on pot drop by only 5 points.

"If left unchecked, 'infomania' will damage a worker's performance by reducing their mental sharpness," says Wilson. "This is a very real and widespread phenomenon." Information overload can reduce a person's ability to focus as much as losing a night's sleep can, he adds.

http://www.newscientist.com/article.ns?id=mg18624973.400