危機に瀕するIT業界の「モラル」

ITProの記事( やはり危機に瀕していたIT業界の「モラル」)より。日経コンピュータが実施したアンケートの結果。

身につまされる話が多い。「使う人の利便は確かに大事だが,作る人の幸福が,あまりにもないがしろにされている」という言葉が印象に残る。ここに挙げられている問題点は、すべて事実だと感じる。こういう問題を是正するために何をすべきかを真剣に考える必要がある。

  • 自分に必要なスキルはなにか。チームのメンバにどのようなスキルを身につけてもらうか
  • 顧客の問題点はなにか。それを解消するために、どのように顧客を教育するのか
  • チームのメンバがやりがいを感じるために、どのような工夫ができるのか。また、やりがいを削ぐのはどのようなことか。

などなど。

以下は記事からの抜粋。

  • 「後から結果を見て非難するだけなら,誰でもできる」
  • 「ITエンジニアのプロ意識が,以前に比べて低下していると思う。ITエンジニアには特に資格などが必要なく,誰でもなることができるからだろうか」(ベンダー勤務,30代)
  • 「ベンダーは単に利益を追い,ユーザーはコスト削減をうたうばかりで,双方とも自己主張しかしてしない。何のためのシステムなのか,どんな利便性を提供するシステムなのかの視点がユーザー,ベンダーともに欠けている。IT業界に生きる一人として,非常に嘆かわしい」(インテグレータ勤務,30代)
  • 「最近の建築偽装ではないが,この業界もソフトを納めたもの勝ちになっている。ユーザーでも楽だからといって,すべてをお任せにしてしまう者もいる。双方ぬるくなって仕事をしている以上,良いものはできない」(ユーザー勤務,40代)

ユーザーからの過剰な価格引き下げの圧力や短納期化,人手不足といった過酷な仕事状況

  • 「あまりに価格競争が激しく,ベンダー側は人件費を削ってまで受注するという負のスパイラルが発生していると感じる。これでは,教育をする費用や時間を取ることができない。ユーザー側も発注時に『どれだけ値引きするか』だけで決めるのではなく,全体の費用を考慮し,費用を支払うべきである。そうしないと,お互いにしっぺ返しがくるだろう」(ソフトハウス勤務,30代)

ユーザー側のモラル欠如や,情報システム部門のレベル低下

  • 「詳細設計書を客先に提出し,検収していただいたにもかかわらず,実装段階で追加仕様が発生することが多々ある。ユーザー企業のモラルは問われないのだろうか?(中略)仕様書の改版に疲弊した現場では,テストが軽視されるという悪循環が見られる」(インテグレータ勤務,30代)
  • システム開発の案件では,顧客企業側に問題があるケースも少なくない。実際の開発を始めてからの仕様変更などを,当たり前のように言ってくる。顧客企業側のモラルも問題だと思う。レベルの低い顧客とばかり付き合っていれば,レベルの低いシステム会社が育つのは,仕方がない気がする」(インテグレータ勤務,30代)

人材育成やプロジェクトへの人員配置に関する,ベンダーの姿勢

  • 労働基準法に明らかに違反している労働条件,明らかな偽装派遣や人身売買とも思える強制的な客先への出向。逃れるためには会社を辞めるしかないが,辞めようにも辞めさせてもらえない。教育を全くせずに,OJTと称して現場に放り込み,人間を使い捨てる」(インテグレータ勤務,30代)
  • 「人手不足から,スキルが多少低くても雇い入れ,『教育しろ』という。教育しながら,増えていく仕事をこなしているのに,『本来の業務もできて当然』と言われる。かたや,マイペースでのんびりやっている人間には仕事を振らず,挙句の果ては1日ネットサーフィンしている人間にも給料が支払われる。モチベーションが高い人間も,いつしか低くなっていくのは当然だろう」(ソフトハウス勤務,30代)
  • 「ベンダーとユーザーの双方で,システムの価値を共有することが大切。そのためにはユーザーからRFP(仕様はもちろん,思想や求める成果が明記されたもの),ベンダーからは基本仕様書(RFPに記載された成果をシステムで実現するための概略が記載されたもの)を持ち寄って合意するプロセスが必要になる。このための時間は省略できない」(ベンダー,30代)
  • 「下請けのSEには,お客さんと直接やり取りすることがない。それでいて仕事は単調なコーディング作業で,自分がシステム開発にどう貢献しているかも分からない。これに加えて仕事が過酷となれば,モラルを保てるはずがない」
  • 「使う人の利便は確かに大事だが,作る人の幸福が,あまりにもないがしろにされている」